失語症と向き合い“つなぐこと”

言語聴覚士の佐々木です。

今回は失語症について書いてみます。

「何を言っているのかわからない世界」


少し想像してみましょう。

あなたが、ある日突然、言葉の通じない世界にいたとしたら・・・


目の前の人があなたに話しかけてきました。

この人は笑顔で話しかけてくれているから怒ってはいない。

何か伝えようとしてくれている素振りはわかる。

ところが・・・


何か話しかけられているけど、何を言われているのかわからない。

聞き返そうとしても、どう話していいのかわからない。

看板の文字を指さしているけど、その文字がわからない。

どんな文字を書いたら伝わるのかもわからない。


これは、重い失語症の方の置かれている状況を表しています。

—— 失語症とは ——

失語症は、知的機能や非言語的コミュニケーション(身振り、絵、表情など)は保たれているものの、何らかの脳損傷により「聴く」「読む」「話す」「書く」の言語的コミュニケーション能力すべてが障害される。


そもそも、失語症という単語になじみがない人が多いと思います。

私もこの仕事を志すまで知りませんでした。

言い換えれば、失語症は、コミュニケーションが苦手になる、ということを意味します。


「苦手が招く社会的孤立」


私たちは、潜在的に苦手なことを避けようとする傾向にあります。

失語症の方にとって、コミュニケーションをとる、という苦手分野は避けたい場面です。

となると、人との交流機会がなくなり始め、着実に社会活動が制限され、次第に孤立してしまいがちです。

社会的に孤立すると、どんどん苦手なものに目が行くようになってしまいます。

そうなれば、失語症の当事者を支える家族も又、当事者を思えば思うほど途方に暮れてしまいます。

このような状況の中では、悩みや辛さを共有したり一緒に考えながら前進できたりするような、同じ境遇の人と出会う機会がほとんどないのではないでしょうか。

「失語症と向き合う人たちとの出会い」


先日、失語症の方とその家族が集まる会にお邪魔してきました。

これは、言語聴覚士の仲間が運営に携わっている活動で、私自身とても関心があった中で、今回かたりばとしても関わることができた次第です。


その会では、失語症の方やその家族が、

・障害になってからの人生について
・どうやって乗り越えているか
・今抱えていること

などを語る場面がありました。

うんうんと頷きながら聞いている参加者の姿は、私が求めていた場面そのものでした。


きっと、失語症の方は、他者とつながることで自身の障害について語り始めるのではないか。

そうすれば、障害の理解につながり、私たち言語聴覚士の失語症臨床の糧になっていくのではないか。

私は、失語症の方の話を聞きたい。

改めてそう強く感じました。

「私たちにできる“つなぐこと”」


当事者同士だから話すことのできること。

そこで語られることには、失語症の臨床に携わる者にとって、とっても貴重で重要なことがあるような気がしました。

だからこそ、失語症のことを一番理解しているべき私たち言語聴覚士にできる事は、

『つなぐこと』

だと思います。

失語症をキッカケに社会的孤立を招いてしまったり、同じような問題を抱えていたりする人たちをつなぐことで、失語症に関する臨床が発展していくのではないでしょうか。

そして、その積み重ねが失語症の方の社会活動へと結び付き、ひとりひとりの生きる意欲になっていくのではないでしょうか。


失語症の方やその家族をつなぐ。

それが、私たち言語聴覚士の一つの役割だと思っています。


つい、熱くなってしまいました。

最期まで、お読みいただきありがとうございました。


原著:佐々木

編集:北井 (かたりば編集長)

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