その人らしさに寄り添う身近な存在

こんにちは。作業療法士の小長谷信登と申します。

今月は私の方から、「その人らしさに寄り添う身近な存在」というテーマでお話させていただこうと思います!


利用者様のご自宅へ訪問をしてリハビリテーションを行う(以下、訪問リハ)目的は、千差万別です。


例えば、

「できる限り足を強くして,散歩ができるようになりたい」

「料理ができるようになって,自分の好きなご飯が食べられるようになりたい」

「ベッドから起きて座れるようになりたい」

「家族・友人に自分の言いたいことが伝えられるようになりたい」

などなど。


訪問リハを始める際に目的となるものは、その時点で「困っていること」や「できるようになりたいこと」があって、ケアマネージャーや医療機関からの紹介で開始となるケースがほとんどだと思います。


初回支援時にある程度の評価と情報収集を実施し、支援計画や方針を立案し、支援プログラムを利用者様・ご家族へ説明し、同意を得られてから支援開始、という大まかな流れがあると思います。


その過程の中で、「何かできるようになりたいことがありますか?」と直接お聞きすると、


「わからない」

「特にないよ」


といったお返事をいただくことがあります。

皆さんはご経験ありますでしょうか?

(私だけかもしれませんが。。。)


こういう時に「とりあえず・・・」という文言で説明を続け、曖昧な目的のもと訪問リハを始めてしまうということが少なからずあります。

そのような場合、


「この方の目標ってなんだろう?」
「何ができるようになればより良い生活が送れるだろう?」


と模索しながら、日々向き合っています。


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難病(多発性硬化症)の方のお話。

車椅子で日常生活動作は何とか自立できていたが、進行性疾患ということもあり、少しずつ介護が必要となってきていた。

訪問リハ開始時に「何かしたいことはありますか?」と聞くと、「ある訳ない」と否定的な反応だった。

四肢の筋力低下も進行し、好きだったパソコン操作やテレビゲームなども最近はできなくなり、日中家で何もすることがなく、うつ気味だった。

訪問リハとしても、運動療法とともに、自助具作成や福祉用具の誘導(環境整備)をしながら、身辺動作の自立と介助量軽減に向けた支援を中心に実施していった。

訪問リハ開始から2ヶ月程したある時、この方から「エスパルス好き?」と聞かれ、「大好きです」と答えると、「実は友達と観戦に行きたいんだよね」と唐突に相談を受けた。

私自身の嗜好と重なったこともあり、インターネットや冊子などで、電動車椅子や介護タクシー等の情報(交通手段・トイレの場所・救急時の対応など)を一緒に確認・検討をさせていただいた。

その際、印象的だったのは、「訪問で来てもらえて、身近に話せる相手ができてよかった」という言葉だった。

※この方は元々、車椅子でも一人で旅行に行く程アクティブな方だったが、身体機能の低下とともにできないことが増え、外出することに対して否定的となっていた。訪問リハにて、少しずつ外出訓練やパソコン操作訓練などを通じて、この方自身の中に元々あった外出への『想い』を肯定的に捉えることができるようになった。

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利用者様の『想い』は、利用者様との距離が近くならなければ気付けないことも多いと思います。

(友達・親戚ではないので節度は必要ですが)

今回のケースの場合は、特別に何かをした訳ではなく、日々の関係性の中で、自然と育まれたものだと考えています。

この方にとって「この人に話してみよう」と思える瞬間があったことが、訪問リハのセラピストとして何より嬉しかったですし、この方の『生きがい』に繋がる支援へと展開できたことが良かったと感じました。

話は変わり。

周知の事実かと思いますが、現在訪問リハ・訪問看護でのリハビリが置かれている立場は益々厳しくなってきています。

要支援者支援に対する減算や訪問看護ステーションにおける人員配置基準など、今後も多岐にわたる制約がなされることが予想されます。

それは介護分野全てに言えることかもしれませんが、「成果主義」導入の流れとともに、診療報酬・介護報酬体系が「効果(成果)」にフォーカスされる時代となってきています。

「クローザー型」で終末期まで訪問に行き続けるのではなく、「中継ぎ型」としての「目標達成→終了」という機能・役割を果たすことが求められる時代では、しっかりと利用者様にとって最適な目標を立案し、次に繋げるという意識を持ちながら支援をすることが重要かと思います。


一方で、進行性疾患や末期がんなど、訪問看護で対象となる利用者様の中には,「今の生活を維持すること」を目的としている方も多くおられます。

そのような方々に対して、目標とは「何かができるようになること」ではなく、「自分らしく(その人らしく)生きること」なのではないかと思います。

その人らしさの捉え方は様々で、関わり方もより個別性を重視した内容になっていくものだと思います。

この『その人らしさ』に寄り添った支援こそ訪問リハの醍醐味だと、私は感じています。


皆さんはどのようにお考えでしょうか?

また、機会があれば、お聞かせ願いたいと思います。


最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


※この度、台風15号の豪雨災害により被災された皆様に心よりお見舞い申し上げます。

特に清水区を中心に断続的な断水等により、多くの方が不自由な生活を強いられたことと存じます。

被害を受けられた皆様には謹んでお見舞いを申し上げるとともに、いち早い復旧・復興を願っております。


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【合わせて読みたい】

『その人らしさを求めて』

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